矢部川くすべぇとは?
■くすべぇが生まれた経緯
約400年前に水害防備林として植林されたクスノキ群を有し、矢部川中流域に位置する中ノ島公園は、2012年7月の九州北部豪雨で被災しました。上流からの流木を捕捉するなど治水効果を発揮したものの、その際に大楠の一部が流失してしまいました。防災意識の向上、歴史の伝承のためにも、国の天然記念物にも指定されたこの地域資源を、今後も保全していかなければなりません。
■くすべぇの今後について
くすべぇというキャラクターの周知によって、地域の人々の自然保護・景観保全意識の定着を期待しています。地域資源を再発掘することにより、地域の人々が歴史的・文化的遺産の保護活動の重要性を再認識し、地域の特色づくりに寄与するのではと考えています。今後はウェブ上での広報をさらに展開し、合わせて地域事業・行事とのコラボレーションを企画していきます。地域の人々が繋がりを持って活動する場を構築することで、様々な相乗効果を期待しています。
■くすべぇの活動
「矢部川くすべぇ」というキャラクターをシンボルに、地域の歴史の伝承・地域に根差す環境教育や、住民の環境保護意識・防災意識の向上を目指します。
中ノ島のクスノキ群は筑後船小屋駅から見ると、生き物のように見えます。そこから地域キャラクターとしてスタートしたくすべぇは、2014年に矢部川くすべぇ実行委員会によって絵本化されました。この事業ではくすべぇのさらなる周知を図るため、絵本の世界をより広げるホームページ・オリジナル商品を制作します。
■矢部川くすべぇ実行委員会構成団体
一般社団法人 筑後青年会議所 / 一般社団法人 八女青年会議所 / 公益社団法人 山門青年会議所 / 特定非営利活動法人芸術の森デザイン会議 /
「矢部川くすべぇの目覚まし予報!」HP制作実行委員会
長い間生きた木には不思議な力が宿り、「木霊(コダマ) 」が住みつくという。これは、九州の筑後平野南部にある矢部川流域、筑後船小屋付近でのお話です。
その昔、矢部川の上流(現在の八女市黒木町)に大きな楠の木があり樹齢数百年のその楠の木には木霊(コダマ)が住んでいました。
濃い緑色で丸い顔、クリクリした目、そしてなぜかいつも舌を出しています。その木霊のことを村人たちはいつも大きな楠の木にいて舌をベーと出していたので
「くすべぇ」と呼んでいました。
恥ずかしがりやでほとんど人前に姿を見せることはなかったのですが、村の子どもたちが楽しそうに遊んでいると、うらやましくなってつい近くに行ってしまいました。
子どもたちはくすべぇの姿を見ると「おばけー!くすべぇおばけー!」と言ってすぐに逃げてしまい、いつも一人ぼっちのくすべぇはとても悲しく、さみしいおもいをしながら過ごしていました。
ある暑い夏の日、森の中を散歩していると、涼しげな音が聞こえてきました。おそるおそる近づいてみると、澄んだ小川が流れていました。
くすべぇは川を近くで見るのは初めてでした。川の中をじっと見ていると川の中に何か動くものが見えました。
手を伸ばすとあと少しのところで逃げてしまう生き物がいました。くすべぇは魚を見るのも初めてだったのです。くすべぇは川にゆっくりはいりました。夏の暑い日に川の水はひんやりしてとても気持ちよく感じました。魚を追いかけているうちに・・・くすべぇは深いところまできてしまい
「うゎっ!」足を滑らせて川に流されてしまいました。「助けて~」・・・ぶくぶくぶく・・・・・・
「だいじょうぶ!?」くすべぇは静かに目を開けたら目の前には小さな女の子がいました。くすべぇはびっくりして目をぱちくりさせておおきくうなずきました。
女の子は続けて言いました。
「びっくりした。いきなり川から流れてきたから。あなたくすべぇよね。
丸くてコケみたいな色でいつも舌を出して、しかもすぐ逃げていなくなるって言ってたのを聞いたことがあったけど。本当にいたんだね」
くすべえはびっくりしましたが、同時に女の子が怖がらないでいてくれてとてもうれしかったのです。
「みんなすぐ逃げていなくなるのにこわくないの?」とくすべえは女の子に聞きました。
「平気よ。だってふわふわだし大好きなくすの木の匂いがするもん。私の名前はさくら。よろしくね。」くすべえはとてもうれしく感じました。
二人は夕暮れまで遊びました。「助けてくれてありがとう。また会いに来ていい?」とくすべえは言いました。
「もちろん。私の名前はさくら。私の家はあそこに見える麦わら屋根の家。」そう言うと、河原からすぐ近くにある家を指さしました。
「うん。また会いにくるね!」と言って大きく手を振ってくすべえは上流の方へ走って行きました。さくらも大きく手を振ってくすべえを見送りました。
さくらは体が弱く、村の子どもたちと同じように鬼ごっこやかけっこができませんでした。
また両親は一日中畑や田んぼに行って働いていたため、さくらは家に一人でいることが多かったのです。
さくらは毎日、家の縁側に腰掛けてくすべぇが来るのを待っていました。
くすべぇは家から遠く遊びに行くことができないさくらのために、木の実やきれいな花を持ってきてはいろんな話をしました。
さくらは体が弱く、村の子どもたちと同じように鬼ごっこやかけっこができませんでした。
また両親は一日中畑や田んぼに行って働いていたため、さくらは家に一人でいることが多かったのです。
さくらは毎日、家の縁側に腰掛けてくすべぇが来るのを待っていました。
くすべぇは家から遠く遊びに行くことができないさくらのために、木の実やきれいな花を持ってきてはいろんな話をしました。
「僕の村にはね、大きな藤の木があって春になると紫色の花が満開になるんだよ。」くすべぇは森での出来事や木や草から聞いたことなど何でもさくらに話しました。
さくらも家族のことや村のことをいっぱい話しました。
「この村にもね、大きな大きないちょう木があって、黄色のじゅうたんのようになってとってもきれいなの。それにね、この近くには鉱泉っていって舌がチクチクする不思議な水がわいてるの。ケガしたらそこの水につけると元気になるのよ!」さくらはくすべぇをいつでもやさしい笑顔で迎えました。
くすべえが動くとさわやかな楠の木の香りがしました。さくらはくすべえの匂いがとても好きでした。
くすべえの匂いをかぐと、さくらはすがすがしくて優しい気持ちになれたのです。たくさん話をする中でくすべえとさくらは大事な大事な友達になっていきました。
くすべえがさくらと出会って三年が経ちました。くすべえは相変わらずさくらのもとへ通っています。
その年の七月、とても強い雨が何日も何日も降り続きました。
くすべえの村の川も水かさが増して、山の木や草、時にはおけや傘などいろんなものが泥水とともに下流に流れていきました。
くすべえは川の土手の近くに住むさくらが心配になりました。
くすべえは我慢できなくなって、ついにさくらの村へ走りだしました。長い雨で道はぬかるみ、雨がバチバチバチと地面や木の葉っぱをたたく音が聞こえ、
通いなれた道はいつもと違う道に思えました。
頭の中はさくらのことでいっぱいになり、激しく流れていく川を見るたび不安で涙が出そうになるのを必死にがまんしました。
くすべえは我慢できなくなって、ついにさくらの村へ走りだしました。長い雨で道はぬかるみ、雨がバチバチバチと地面や木の葉っぱをたたく音が聞こえ、
通いなれた道はいつもと違う道に思えました。頭の中はさくらのことでいっぱいになり、激しく流れていく川を見るたび不安で涙が出そうになるのを必死にがまんしました。
さくらの村に着いたとき、矢部川の水位は土手のギリギリいっぱいで、土手の一部はすでに水が浸み出しており、今にも決壊しそうでした。
「あっ!」土手の一部がついに壊れてしまいました。くすべえは大きく息を吸い込みました。
小さかった体はムクムクとふくらみはじめ、ひとまわり大きくなったくすべぇは、必死に壊れた土手にしがみつきました。
すると、どこからか親の楠の木の声が聞こえてきました。(くすべえ、やめなさい!あなたの命がなくなってしまうのよ!)
くすべえは親の楠の木に届くような大きな声で答えました。
「それでもいい!さくらちゃんが助かるならいなくなってもいい!さくらちゃんは僕を助けてくれた。今度は僕が助けるんだ!絶対助けるんだ!」
今にも壊れそうな土手に、がむしゃらにしがみついているくすべぇでした。
時間がたつにつれてくすべぇの手足に力が入らなくなっていきました。
「もう、だめだ・・・・」
薄れゆく意識の中でたくさんの声が聞こえてきました。「くすべえ、がんばって!」と小さな子どもの声。「残り少ないがわしの力を使え!」とおじいちゃんの声。
たくさんの声がくすべえに聞こえてきました。
声の主は近くの森の木や、民家や神社の木。そして土手沿いにいっぱい生えている草や田んぼの稲や畑の作物などです。
親の楠の木が大切なものを守ろうとしているくすべえに力をかしてくれるように頼んでくれたのです。
その声を聞いたくすべえは手足に力が入り、体もますます大きくなり・・・
そして、ついには大きな森のようになり洪水を防ぎました。
そして、ついには大きな森のようになり洪水を防ぎました。
やがて真っ黒な雲は少しずつ薄くなっていき、ついに雨は降りやみました。そして時間とともに川の水位も少しずつ下がってきました。
さくらは長く続いた雨があがるとまっ先に土手を見に行きました。すると、目の前にいつの間にか見たこともない大きな森が広がり、
そこらじゅうにくすの木のさわやかな香りがただよっていました。それは何度もかいだことがあるさくらが大好きな匂いだったのです。
「守ってくれたのね。村のために本当にありがとう。くすべぇ。」すべえは安心した表情で小さくうなずきました。さくらは涙ぐみながらも笑顔でこたえました。
「ずっと体中に力を入れていたせいかなぁ。眠たくて眠たくて・・・。しばらくここで眠らせてもらうね。」そしてゆっくりと大きな目をゆっくりと閉じました。